下肢静脈瘤センター
下肢静脈瘤とは 治療方法について 検査方法について 当院で使用しているレーザー機器について
下肢静脈瘤Q&A 下肢静脈瘤Q&A(ストリッピング手術編) 下肢静脈瘤Q&A(レーザー治療編)
下肢静脈瘤とは
下肢の静脈には動脈とは違い血流が重力によって足先へ逆流しないように弁(バルブ)がついています。それらの弁が壊れると正しく閉じなくなり、血流の逆流が起こってしまい、うっ血が生じて血管の拡張や蛇行することによって瘤(こぶ)ができます。これが下肢静脈瘤です。
下肢静脈瘤があると、足の血液循環が悪くなっているので、足のむくみや痛み、さらに悪化してしまうと色素沈着や皮膚の潰瘍などの症状が出てきます。
下肢の静脈には筋肉よりも内側を走行する「深部静脈」と皮膚と筋肉の間を走る「表在静脈」があります。
静脈瘤ができるのは皮膚に近い「表在静脈」です。
下肢静脈瘤の症状
下肢静脈瘤には多くのいろいろな症状があります。どのような症状が出るかは人によって違います。
だるい、重い、痛い、疲れやすい、浮腫む、足がつるといった症状が多く、冷える、火照るといった症状が出る場合もあります。
そして、進行すると皮膚のかゆみや皮膚硬結(皮膚が硬くなること)、湿疹などが出てきて、最終的には皮膚が黒くなり潰瘍ができてボロボロになってしまいます。
下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤の種類は大別して以下の4つに分けられます。
伏在静脈瘤
足の表面近くにある静脈のうち、本幹となる太い血管が「伏在静脈」です。こぶのように拡張した状態を伏在静脈瘤といいます。
側枝静脈瘤
伏在静脈瘤より枝分かれした、さらに先の部分が、拡張してきたものです。通常、膝から下の部分に見られます。
網目状静脈瘤
径2~3mmの、皮膚の直下の小さな静脈の拡張で、網の目状の広がりを示します。比較的鮮明な青色となります。
クモの巣状静脈瘤
皮膚の表面(表皮)の下の、径0.1~1.0mmの極めて細い血管が拡張したものです。盛り上がりが少なく、赤紫色になります。
治療方法について
下肢静脈瘤には症状や病気の段階、患者さんの希望によって、様々な治療法があります。
1)弾性ストッキング
2)硬化療法
3)ストリッピング手術
4)レーザー治療
と大きく分けて4つあります。
圧迫療法 (医療用弾性ストッキングによる治療)
圧迫は最も基本となる大切な治療です。
弾性ストッキングを履くことによって、足に適度な圧力を与えて余分な血液が静脈瘤の中に溜まることを予防し、深部静脈への流れを助けます。血液を下から上に、表在から深部へと導き、下肢本来の流れに戻します。
むくみもとれ、静脈瘤は小さくなり、下肢は軽くなります。
しかし、これは弾性ストッキングを履いている時だけで、脱いで立ち上がれば、また静脈瘤は出てきます。
つまり、根本的に治すための治療ではなく、あくまでも悪化を遅らせるための保存的治療です。
したがって、静脈瘤が消失するわけではありません。
通常、毎朝起床と同時に着用し、帰宅あるいは入浴するまで履くことが大切です。
なお、寝る時には履かないでください。
また、4か月から6か月で弾性ストッキングはゆるんできてしまいますので、半年に2~3足程度購入してください。
万一、かぶれや湿疹のなどが出現した場合には、いったん使用を中止し、当院静脈瘤治療センターにご相談ください。
メリット
- 低価格
- 履くだけでよいので、日常生活の中で続けられる。
デメリット
- 保険が効かない
- 履いている間しか効きめがない
- 夏は暑い
硬化療法
硬化療法は硬化剤といわれている薬剤を静脈瘤の中に注入して、静脈の内膜に炎症を起こさせ、その上で皮膚の上から圧迫して患部の静脈を閉塞させ、静脈瘤を消失させる治療法です。
1回の施行時間は10分~15分で、外来通院で施行可能ですので、入院の必要はありません。
また、手術のように切るわけではありませんので傷は残りません。
硬化療法によって完全に閉塞した静脈は徐々に小さくなり、最後には組織に吸収されて消えてしまいます。病気の静脈を閉塞させると、血液は正常な静脈を流れるようになり、症状が改善します。
しかし、この治療法が有効な静脈瘤はごく初期のもの、あるいは小さな静脈瘤であり、伏在静脈瘤には適応がありません。
つまり、すべての方を硬化療法だけで静脈瘤を治療できるわけではありません。
また、場合によってはしこり(血栓形成)や静脈炎、色素沈着などの合併症を起こすこともありますので、手術やレーザー治療の補助的なものと考えていただいたほうがよいかもしれません。
メリット
- 外来で治療ができる
- 無麻酔で行い、その日から歩くことができる
- 傷跡がほとんど残らない
デメリット
- 硬化剤注入部に色素沈着することがある
- しこりが残ることがある
- 再発が20~30%に認められる
ストリッピング手術
進行した静脈瘤を根本的に治療するには、手術治療が必要となります。
ストリッピング手術は下肢静脈瘤の根治的な治療法として1900年代初頭より行われている最も標準的な手術で、引き抜く手術です。
現在、日本で最も多く行われている方法です。
これまでの多くの実績から安全で再発も極めて少ない完成された確実な治療法です。
具体的には足の付け根や膝裏などの皮膚を約2cm程度切開し、弁不全を起こしている静脈(主に大伏在静脈または小伏在静脈)を特殊な器具(ストリッパーワイヤー)で抜去し、残った静脈瘤を小切開創から摘出します。
ストリッピング手術は基本的に全身麻酔あるいは下半身麻酔下に行いますが、特別危険な手術ではありません。
また、静脈を抜いてしまっても、静脈瘤内に溜まっていた血液は正常な深部静脈へ流れるため、まったく心配はありません。
むしろ、静脈を抜くことによって下肢の血液の流れは本来の流れに戻るわけです。
一般的にはストリッピング手術は傷跡が残ると言われていますが、当院では可能な限り創を小さくする工夫をしていますので、時間がたてば、ほとんど目立たなくなります。
メリット
- 再発率が極めて低い
- 安定した治療成績
- 安全性に信頼度が高い
- 保険適応で費用が安い
デメリット
- 入院が必要
- 知覚神経にダメージを少し与えてしまうことがまれにある
レーザー治療
静脈の中にレーザー光を導くための細い光ファイバーを通し、血管内に照射するレーザーの熱によって静脈をふさぐ新しい治療法です。
傷跡が目立たず美容的にも非常に優れています。
原則として局所麻酔で施行しますので日帰り手術も可能であり、従来の手術に比べると低侵襲(体にとってストレスが少ない)です。
欧米では、15年以上の歴史があり、すでに静脈瘤治療の多くはレーザー治療で行われています。
長い間、我が国ではレーザーの保険診療が認められず、片足だけで数十万円と大変高価な治療法でしたが、日本でも平成23年1月より保険適用となりました。
ただし、厚生労働省が正式に認可したレーザー治療機器(レーザー波長が980nmと1470nmのELVeS(インテグラル社))で行った場合にのみ、健康保険が適応されます。
仁厚会病院が採用しているのはこのうち、1470nmの最新機種です。
自費診療で行っている施設では違う波長の機種で行っていることもありますが、われわれはこれまでの多くの治療経験から、健康保険が適用されたELVeSレーザーで静脈瘤の治療は十分可能であると考えております。
メリット
- 日帰り手術が可能 (ただし、静脈瘤の程度により短期入院をお勧めする場合もあります)
- 手術部位は傷跡がほとんど残らず目立たない
- 出血がほとんどなく、体への負担が少ない
- 保険適用で費用が安くなった
デメリット
- 数年後に再発するケースがあるといわれている
- 日本では新しい治療のため長期成績が不明である
(欧米ではストリッピングとレーザーは治療成績が同等とのデータはある)
検査方法について
基本的に下肢静脈瘤の診断につらいとか痛いといった検査は必要ありません。
視診・触診による診断をより確実にするために、まずは①ドプラ検査、②超音波検査などの非侵襲的な検査(痛くない検査)を行い、また必要があれば、③下肢静脈撮影を施行します。
以下に、主な検査方法を紹介します。
ドプラ検査
皮膚の上から超音波をあてて、血液の流れる音の大きさや長さで血液の逆流の有無を調べる検査です。簡単で痛みのまったくない検査です。1分程度で終わります。
超音波検査(カラードプラ検査)
超音波を当て、血流の方向を観察したり、血管の大きさや走行・逆流の有無を観察する検査です。少し時間はかかりますが、簡単で痛みはまったくありません。
下肢静脈造影(レントゲン検査)
足の甲の静脈から造影剤を注入し、レントゲンで撮影します。
まれに造影剤によるアレルギーが起こることがありますが、下肢の静脈を正確にみることができる検査方法です。
ただし、最近ではこの検査が必要になる方は100人に1人くらいです。
その他に、手術やレーザー治療を行うことになった場合は、採血検査、心電図、胸部レントゲン撮影などを行います。
当院で使用しているレーザー機器について
最新のレーザー機種を導入しました!
仁厚会病院下肢静脈瘤治療センターではレーザー治療導入時より、980nmのエルベスレーザーを使用していましたが、このほど最新の1470nmのレーザー機種を導入いたしました。
従来の980nmのエルベスレーザーに比べ、痛みや出血が少なく、より体に負担の少ない治療が可能になりました。
基本的な方法は、従来とまったく変わりません。
また、従来通り、健康保険も適用されております。
ご希望の方は、まず診察のご予約をお願い致します。
980nmと1470nmレーザーの違い
水の吸収率の違い
従来の波長は980nmでヘモグロビンンへの吸収率が高く、血液のあるところで熱を発することに対し、新機種の波長は1470nmで、水への吸収率が高く、血液の有無に関係なく血管壁の水が反応して熱を発するため、まんべんなく血管壁を焼灼することができるようになりました。
そのため、従来使っていた980nmと比較して水に対する吸収係数が、40倍となり、術後の皮下出血や、痛みが従来の機種に比べ大きく減少しました。
ファイバーの違い
従来の980nmのレーザーファイバーは、先端の1ヵ所から前方向にのみレーザーが照射されるため、症例によっては焼灼にムラが出てしまうことがありました。
それに対し、最新の1470nmレーザーはレーザーのエネルギーが2ヵ所から分散して照射されるため、静脈内を360度均一に焼灼することができ、かつ1回の手技で2度の照射を行うため、適度なエネルギーで、より確実に焼灼できるようになりました。
従来の980nmレーザーと最新の1470nmレーザーの違い
波長 | カテーテルファイバー | 保険 | 痛み | 皮下出血 |
980nm | 1ヶ所(前方のみ) | 適用 | 術後3~4日後痛みあり | あり |
1470nm | 2ヶ所(360度全周) | 適用 | かなり少ない | 少ない |
- 980nmレーザー後
- 1470nmレーザー後
下肢静脈瘤Q&A
静脈瘤が自然に治ることはないですか?
残念ながら一度発症してしまうと自然に治ることはなく、徐々に症状は進行していきます。
下肢静脈瘤は良性疾患ですが、慢性かつ進行性疾患なのです。
静脈瘤はありふれた病気なんですか?
その通りです。非常に多くの方がなる疾患です。
欧米では、成人女性の15~20%、男性ではその3分の1程度に静脈瘤がみられるとの報告もあります。
日本でも10人に1人はいると「言われています。
年齢と関係ありますか?
どの年齢の方もなる可能性はあります。
しかし、ほとんどの場合は発病は20歳代後半以降で、その後徐々に進行するため、初めて病院を訪れるのは40~50歳代が多いようです。
治療を受けられるのは40~80歳代の方が中心です。
職業と関係ある?
あります。明らかに立ち仕事の方、特に1カ所にじっと立つような職業の方に多いです。(理容師、美容師、調理師、販売員、看護師、薬剤師など)
もちろん、専業主婦の方も非常に多いです。
遺伝はする?
はい、静脈瘤になりやすい体質は遺伝します。
欧米では静脈瘤患者の50%以上は、血縁者にも静脈瘤があると報告されています。
静脈瘤をそのままにしておくと命をおとすことがありますか?
絶対無いとはいえませんが、ほとんどないと言っていいでしょう。
しかしながら、放置した結果、大きくなった静脈瘤が破裂して出血したり、静脈瘤の中にできた血栓が飛んで肺動脈を詰まらせると命をおとす危険性はゼロではありません。(エコノミークラス症候群)
飲み薬で静脈瘤を治すことはできませんか?
残念ながら静脈瘤を根本的に治す薬はありません。
しかし、痛み、だるさ、むくみ、こむら返りなどの症状を抑える薬はあります。
当院では副作用の少ない漢方薬や、かゆみ、乾燥などを防ぐ軟膏、ローションを補助的に用いています。
弾性ストッキングは有効ですか?
はい、症状を軽減するという点ではとても有効です。
しかし、弾性ストッキングは、静脈瘤を根本的に治すことはできません。
レーザーやストリッピング手術は何歳まで受けられますか?
とくに年齢制限はありません。
日常生活を自立して送っていらっしゃる方であれば、何歳でも受けられます。
レーザー治療もストリッピング手術も体に対するストレスは小さい治療ですので、80歳以上の高齢者でもまったく問題ありません。
レーザーや手術を受けたあとの受診や検査はどうしたら良いですか?
治療後はアフターケアも含め、何度かは来院して頂きますが、そんなに頻回ではありません。
元々の静脈瘤の状態や追加治療の有無によって通院回数は変わりますので、担当医にご確認ください。
初めてでも電話予約はできますか?
はい、ご予約は電話にて受付けしております。
学会等で医師が不在の場合もございますので、ご予約を取られた方が確実だと思います。
お気軽にお問い合わせください。(仁厚会病院 TEL:046-221-3330)
一番安全な治療法は?
一概には言えません。
しかしながら、医師、患者さんが共に治療上の注意を怠らなければ、どの治療も安全に行えます。
日常生活での注意点があれば教えて下さい。
- 静脈瘤の症状を改善するために、以下の点に注意しましょう。
日中は長時間の連続した立ち仕事などは避け、可能であれば1~2時間に1回(5分程度)は、足を心臓より高くして休息しましょう。休息がとれない方は、足踏みをしたり、歩き回ったりしてください。筋肉のポンプ作用で血液の流れがよくなります。 - 正座はできるだけやめて下さい。
- 夜寝るときには、低いクッションや座布団などを使用して足を少し高くして休みましょう。
- ささいな掻き傷・虫刺されなどが、色素沈着・下肢潰瘍などの悪化の原因となります。静脈瘤のある足は清潔にし、外傷を防ぎましょう。
- 水虫の存在には注意してください。心配な方は担当医にお申し出下さい。
- 体重のコントロールによって、静脈瘤の症状が改善する場合があります。適正体重の維持に心がけましょう。
下肢静脈瘤Q&A(ストリッピング手術編)
ストリッピング手術の傷跡はどのくらい残りますか?
ストリッピング手術では、5mm~2cmほどの創が最低2カ所必要になりますが、1~2年以降にはかなり目立たなくなります。
しかし、線としての傷跡はある程度残ります。
ストリッピング手術にかかる時間はどのくらいでしょうか?
当院の血管外科担当医師は全員、数百例~数千例の静脈瘤の治療経験があります。
したがって手術時間も短く、片足で30分~45分、両足でも1時間~1時間30分程度です。
ストリッピング治療は安全ですか?
当院のストリッピング手術は、経験豊かな専門の血管外科医師が行っております。
その術後成績・術後経過は極めて良好ですので、ご心配はございません。
また、仁厚会病院では術後合併症が無きよう、様々な工夫や対策を行っておりますので、安心してお受け下さい。
ストリッピング術後の再発の心配はないですか?
再発率はゼロではありませんが、逆流のある血管そのものを抜去してしまうので、その可能性は極めて低いです。
下肢静脈瘤Q&A(レーザー治療編)
レーザー治療は安全ですか?
仁厚会病院ではレーザー治療に習熟した血管外科医によって治療が行われていますので安全な治療法です。
なお、当院で行っているELVeSレーザーでの重篤な合併症の国内報告例は1例もありません。
レーザー治療は健康保険が利きますか?
当院のELVeSレーザーは健康保険適用となります。
日本で唯一、厚生労働省で認可され、健康保険での治療ができる静脈瘤レーザー治療機器です。
傷跡はどのくらい残りますか?
レーザー治療では、原則3㎜程度の傷が1箇所必要になりますが、ケロイド体質でなければ、治療1~2年以降殆ど目立たなくなります。
レーザー治療の施術時間はどのくらいでしょうか?
片足で20~40分、両足で1~1時間半となります。
再発の心配はないですか?
ストリッピング手術でもレーザー治療でも、再発の可能性はゼロではありません。
しかし、当院の血管外科専門医師が適切な治療を行えば、再発の可能性はきわめて低いです。
もちろん、過去に他の病院で手術をした方の再発症例に対しても適切な治療を行います。
他の施設で治療された後、再発された方も多く来院されています。
ぜひ、一度ご相談ください。
治療を受けた方の声
治療を受けられた方々のお声を一部ご紹介させていただきます。
- 先生の診察やスタッフの対応が良かったです。
- 話をよく聞いていただき患者として、とても安心いたしました。
- 先生からわかりやすく説明していただき、スタッフの方々も親切で、安心して手術を受けることが出来て、感謝しております。有難うございました。
- かゆみがなくなり思い切って手術を受けて良かったと思っております。
- 先生の丁寧なご説明等安心でした。
- だるかった足が楽になりました。また、夜間につらなくなりました。
- 長年悩んでいた足の潰瘍が良くなりました。
- レーザー治療を受けて、足のくろずみが薄くなりました。